宇宙ブログ

 葛飾っていう東京の端の端な土地柄のせいなのか何なのかはわかりませんが、ちょいと不思議な人を見かけることがしばしばあって(急に歌を歌い出すおじさんとか、急にラジオ体操を始めるおじさんとか、ずっと空間に向かってしゃべり続けてるおじさんとか)。オレの予想だとこのちょいと不思議ーズはきっと宇宙人で、普通の人になりすまして地球の調査をしているんだけど、まだ完全になりすませる域には達していなくて時々ぼろが出ちゃってるんじゃないかと。だからこういう、わけのわからない行動をしている人を見たら、とりあえず宇宙人だってことにして納得しています。

 でね、この前も見かけたんだ。見た目はサラリーマン風のおじさんで、五十代半ばくらいの身長は低めでくしゃっとした感じ。そんなおじさんはグレーが強めのスーツを着ていて、地下鉄の通気口の上に立ってたんですよ。あの金網な感じのヤツの上に。で、あの通気口スペースって、上昇気流が発生するスポットじゃないですか。雨の日にそこを通ると、傘がふあーっと上に持ち上げられるような、そんなスポット。例に漏れずその通気口スペースに立っていたおっさんも上昇気流を受け止めていて、スーツの上着がパタパタしてたんですよ。ボタンは留めていたみたいなので、ホントにちょっとだけ、クリオネみたいな感じでパタパタとしていて。

 で、あの、何て言ったらいいんだろう。女の人だけに許される、上昇気流でスカートがめくれないように両腕をキュッとさせながらスカートを押さえつける仕草ってあるじゃないですか。あの、かわいい仕草。その感じ。その感じで、おじさんがちょっとだけパタパタしてるスーツを、キュッ…として押さえたんです。それが女子高生とかならともかく、くしゃっとおじさんがやったもんだから、すげえ気持ち悪くてさ。うわ、何コイツ気持ち悪いって思ってる間に、いったん通気口からの風が止まったみたいなんだけど、数秒後にまた風が吹いておじさんのスーツがパタパタして、キュッ…と押さえてて。

 気持ち悪い絵を2連続で見せられたイライラと、そんなにパタパタがイヤなら通気口の上に立ってんなよ一歩横に行けよが頭の中でぐるぐるしてたんだけど、あ、そうか、あいつ宇宙人かって思ったら納得した。きっとリサーチがちょいと間違ってて、キュッていう仕草はかわいいってところまではたどり着いてたんだろうけど、それは女性に限るっていうのが足りなかったんだろうなぁ。なのでもし宇宙人がこのブログを読んでいたら、ひとつ学んでもらいたい。おじさんの姿でその仕草しちゃダメ。