はじめての入院6

  寒中お見舞い申し上げます。ところでオレは、年明け早々、生牡蠣に初あたって死んでました。時折コイツの破壊力は耳にしていましたが、まぁすごかったです。当たった人が口をそろえて言う「もう二度と食わねぇ」って気持ちを心底理解した。とにかく胃は地獄のように痛いし、熱はとどまるところを知らぬように上がり続けるし、そして全力で下しているし。しかもその下しっぷりも尋常じゃなくて、インプットより何故だかアウトプットの方が多いんですよ。「インとアウトが同等って言うのが保存則じゃなかったっけ…」と朦朧としながら神様に文句をつけていました。そんな状態で病院に行ったところ、点滴とか打たれましたがもらった薬を飲んでじっとしていたら治りました。イェア!

 そんなわけで、入院話の続きです。前回は、手術が始まって、麻酔を受けて意識が飛んだ所までをお届けしました。ということで今回は、意識が飛んだ後のふにゃふにゃした感じからのお話です。
 

 点滴から来た麻酔の冷やっとした感じの直後に意識はストンと落ちて。その後は、眠っているのとは少し違う、どっちかっつーと金縛りに近い感じの暗い意識の中でふわっとしてました。意識はあるけど身動き取れない感じ。そのふわっと感覚の最中に、一回すげえ呼吸が苦しくなった感覚を味わい、その後おしっこをもらしたような感覚を味わって、またふわーっとしていたら「…こさん…かねこさん、終わりましたよ、大丈夫ですか」と誰かに言われて(…んだよ…まだ眠いのに…)と思いながら嫌々まぶたを開いたら「大丈夫ですか?大丈夫ですか?」と何度も誰かに言われて、ようやく手術が終わったことを理解したオレは、さて、切った貼ったされたオレの体は一体どうなったんでしょうとボンヤリな意識の中で思うわけです。で、体の動きをちょっとずつ確認していたら、どうやらオレは仰向けに寝ているんだけど、手術をした右腕がベッドに付かないっていうことがわかったのね。大の字で寝たいのに、右腕が下に行かない。どんなにがんばっても変なところでふわふわ浮いてるんだ、右腕が。なので、寝ぼけながら右腕の姿勢のつらさをお医者さんに伝えて、ベッドと、少し上に持ち上がっている右腕の間に布団を挟み込んでもらった。 うん、これなら大丈夫だ。

 えーと、ところでオレがどんな手術を受けたかっていう話って書いたっけ?ちょっとその辺の記憶があやふやなので、一度ココに記しておきましょう。

?悪そうな所を取ります。右腕の脇の下のあたりを皮膚からその下数cmくらいをごそっと(手のひらサイズくらい)取り除きます。
?取ったついでに背中の方まで切れ目を入れます
?その切れ目を取り除いた右脇の部分をカバーするようにグイと引っ張ってきて、皮膚やら筋肉やらを縫い付けます。
?できあがり。

 医学ってすごいよね。ちなみに↑の事をされていた間は、麻酔を受けていたので全くの無痛でした。ていうか以後ずっと無痛。こんなに切られて取られて縫われて、無痛ってどういうことなんだろうな。ちなみに後ほど数えたら、70〜80針くらいの縫い傷でした。何で痛くないんだ。

 まぁそんな感じで手術も終わり、お医者さんに終わったよと起こされたり腕の下に布団を挟んでもらっている内に、麻酔がまだ残っていたようでまた意識がふわっとして飛んで…次に目が覚めた時には、元通りの病室の天井がそこにあった。目が覚めたときに、横にいた看護師さんやら母やら主治医さんやらから声を掛けられていたようだけど、あんまりよく覚えてない。後から聞いたら手術時間は3時間くらいだったらしいけど、その3時間がすっ飛んだ感じだった。ちょっと長めのザ・ワールドを喰らったらこんな感じになるんじゃないかな。そんな手術後の寝たり覚めたりのふわふわ意識の中のどこかの時間で、若い頃の稲川淳二似の主治医さんがやって来ていたらしくて「かねこさん見てみるかい?いましか見るチャンスはないよ」と摘出した患部を見せてもらったんだけど、視界も意識もぼんやりであんまりよく見えなかった。肉っぽい何かが水みたいな何かに浸されていて、ああそう、って思った。

 そんなことより何より、とにかくオレは寝たいんだ。切り取られた肉のことなんてどうでもいいよ…と再び眠りにつきながら、このお話はもうちょい続くのです。なんだか短編小説くらいのボリュームになってきたね。