初めての入院3

 これからしばらく入院のことばかりを書いていきますが、手術したの3ヶ月前なのに現在もリハビリとかしています。いまのオレは、ポンコツ人間なのです。

8/10(火)-3

 ジャージに着替えてベッドに寝転がった後すぐに、今日の担当看護師さんのゆうこりん(あだ名)がやって来て、フロアの案内をしてくれた。風呂、デイルーム(お見舞いに来てくれた人とお茶したりするとこ)、ナースセンターあたりをぐるっと回り、ついでに身長体重を測ってベッドに戻った。そしたらちょうどそのタイミングで、向かい側のベッドにオレよりちょい年上くらいの兄さんが看護師さんに案内されてきていました。この人も今日から入院らしい。ここは4人部屋なんだけど、結局オレと向かいの兄さんだけの、実質2人部屋状態で、後々、この状況がどんなに幸せだったかを思い知るのです。

 で、自分のベッドに戻ったら、ゆうこりんから「お熱を測りましょう」と体温計を渡されたので、熱を測ったら7.5℃。「うーん、外も暑いし(ド真夏でした)着いてすぐだから、そのせいでちょっと高めなのかもしれませんね、また後で測りましょう」といったん置いとかれる。その後、入院のスケジュールの紙やら「私たち看護師はこういった目標で看護します」的なことが書かれている紙やら何やらを渡されて説明されて、あわわわしてたら「いっぱい紙があってごめんなさいね。で、次の書類なんですけどー」と間髪入れずに新たな紙を出してきたゆうこりんはいい人でした。で、実際、この入院スケジュールの紙とか、とても参考になったんだ。いい書類だったんですよ。手術前日の何時から食事と飲水はダメで、点滴針は何時から刺して、食事やトイレは手術した何時間後からOKで…というのが書いてあったのです。なんならアップしてもいいんだけど、いま酔ってるからめんどくせえ。

 そんな説明をゆうこりんから一通り受けた後、右脇の患部を見てもらい「何かほかに心配なことはありますか?」と聞かれたので「痛みに対する恐怖のみ心配です。そのほかについては、全面的に先生と看護師さんを信用していますので、よろしくお願いします」と答えた。ゆうこりんはにっこり笑って「わかりました」と答えてくれましたよ。 とにかく、痛いのが大嫌いなんだオレは。あと怖いのとか辛いのとか、納豆とかも嫌いです。

 そんなやりとりが終わって、オフの時間。オフってつまり、放置。手術前も術後もそうなんだけど、オフの時はホントにオフなんだ。ご自由にどうぞのスタンスで、病院側からはとにかくノータッチでド暇。なので事前に用意した小説(友人が貸してくれた『深夜特急』)、DS、手術の日にLAN端子を奇跡的に発見して、親に慌ててメールして持ってきてもらったノートPCが今後大活躍するわけですが。そんなわけで小説をさらさらと読んでいたら、急にカーテンの向こう側から「カネコさーん」と呼ばれて、「はーい」と返事する間もなくカーテンをシャーと開けられた。以降、呼ばれるたびにずっとこんな感じ。返事をする間くらい欲しかったなぁ。

 で、なんじゃいと思ったら、准教授的ポジション(前で言う、助教授)の女医さんが居て(主治医で教授なのは稲川似の人)点滴の針を刺しますよー、と。ちなみに美人、だけど、どこかすれた感じがするのはそういう業界だからか?「利き手は右?それじゃ左手に刺そうか」と左手の甲側の手首ら辺(腕時計を装着するラインの時計のトコ)に針をぐんって刺された。ぐんって、刺されたんだよ。プス、とかじゃなく、ぐんっ。その威力に衝撃を受けていたら「はい、これで手術前日の山場はお終い。痛かったりしびれたりはしてない?ちなみに刺したのは鉄じゃなくてプラスチックだから大丈夫よ」と、なんだか女医に勢いで丸め込まれた感じがした。鉄じゃなくてプラだとなにが大丈夫なのかわかんねえよと思いつつ、刺されてから数十分くらいは刺された針の違和感がすげえあって(刺された針の存在感がとんでもねえ)、さらにその後2日間くらいは「抜けないように」って慎重にしてたけど、だんだん慣れてきて針が無かったのと同じくらいの扱いになってった。慣れってすげえな。

 時は戻って、そんな点滴針を刺された数十分後、再度ゆうこりんから「熱を測りましょう」と言われ、測った結果が7.7℃。「あれ?ホントに熱があるの?」っていう雰囲気になって、ゆうこりんから「氷枕をしましょう」と氷枕をセッティングされた…っていうところで、夜勤の看護師さんに交代。ナナちゃん(あだな)。若い。

 オレは熱を出すことに関しては若干ベテランの空気をまとっているので(8℃くらいまではあんまり驚かない)別に7℃代とかよくあることだよ…と平気な感じで歯磨きをするために歯ブラシに手が伸びた瞬間に、ふとナナちゃんと目が合ったのです。で、2秒くらい置いた後、無言で「はいっ」とナナちゃんから体温計を差し出されました(おそらくゆうこりんからの引き継ぎで、カネコは熱があるよと伝えられていたのだと思われます)。で、測った結果がまさかの38℃ジャストだったので、ナナちゃんは、むー、という表情で「こうなったらもう、氷枕でがんがん冷やしますからね」と言い放ちやがったのです。仕草、セリフ共に、超かわいかったです。

 結果、2時間おきくらいのペースでナナちゃんに氷枕を替えられて、ホントに頭をがんがん冷やされました。で、夜も明けて手術当日。明け方に氷枕を替えてもらい、ナナちゃんが立ち去り際、病室のカーテンを半分閉めかけた状態でオレの目をのぞき込むように見ながら「カネコさんの熱が下がることを、お祈りしてますからね」との言葉を残し、カーテンを閉めるとか…ねえ?もうなに?オレ、下がろうって思ったよ。

 そんな感じで氷枕を入れ替え攻撃をくらい、寝るに眠れなくて夢うつつのまま、結果的に恋に落ち、手術当日の朝を迎えたのです。