寮のメシがまずいって話、書いたっけ?

 僕は今、会社の寮住まいなんですけども、そこのメシがそれはもうイリュージョンのようなまずさで、ときに繊細で、ときに激しく、まずい。とにかく、なにをしたくてこのメニューにして、その上まずく調理できるのかがまるでわからない。ちなみに同じ寮に住んでいる先輩は「あれは調理じゃなくて、調合だ」と言っていました。言い得て妙。カレーみたいな煮込む料理ってさ、たくさん同時に作ると、不思議とおいしくなるじゃないですか。でもそれがまずいの、この寮。料理の法則を無表情で蹴り飛ばしてくる感じ。なにをどう工夫したらこのまずさを演出できるのか、そういった意味では興味をそそられるけど、味には一切そそられない。

 しかもこの寮のずるがしこいところは、春先はそこそこ食えるものを出しやがるんですよ。で、新入社員に「まあ、そこまで美味しくはなくとも、それなりには食えるじゃん」という印象を持たせた上で、夏、秋にかけて徐々に徐々に手を抜いていって、じんわりと舌を麻痺させていくという巧妙さ。完全にご利用は計画的にです。それに気がついたのは今年の正月明けですよ。年末年始に実家の味を堪能して、そして休みが明けた後に寮に戻って最初の晩飯を食べて、というか目にして引いた。今でも覚えてるけど、どうやら焼いたような魚の上に、なんらかの手を加えた感じの野菜が申し訳程度に盛られていて、形容するなら、まるで生ゴミの一歩手前のような一皿を出されたのです。ごちそうさまでした(一口も手をつけずに)。

 それ以降、寮で晩飯は取らずに、朝食のみしかたなく摂取している毎日を過ごしていたのですが、朝食は朝食でハイレベルだったりします。笹かまぼこを半分に切って、醤油をまぶしてあぶったものがポツンと一品でてきたり、はんぺんにチーズ乗っけて焼いてみたり。あと、ししゃもにカレー粉をまぶして揚げたヤツも出てきたな。朝だぜ?いま。オレが思うにね、朝食だったら、ご飯とみそ汁と、それこそ目玉焼きでも出してくれれば良いと思うんですよ。それをわざわざ、手の込んだことをして朝からガッカリさせてくるのは、会社からの遠回しな嫌がらせとしか思えない。もっとシンプルでいいんだ。余計なことをしないでくれ。

 そして今朝、またひとつオレの想像を超えた朝食が用意されていまして。この寮の朝食のフォーマットは、ご飯と、みそ汁と、それに加えてもう一皿おかずがついてくるというものになっているのですが。今日、その一皿に盛られていた料理は、何を血迷ったか、目玉焼きと卵焼きだった。玉子&玉子。

 なんか、すごいシュールな一皿だった。この二品が同居するなんて考えたことなかったから。