毎度毎度レスが遅いのは、僕のせいではなくて、みんなのせいです。新しくパソコンを買ったんですけど、実家にウィンドウズを忘れるという致命的なことをやらかしたため、どうしようと神に問うたら「前のパソコンのハードディスクをくっつけたらいいわ」というお言葉を頂いたため、そうしてます。神ありがとう。でね、でね、実家のPCのデータをあさってたら、懐かしおもしろいの出てきたのでお届けしますよ。

                                                                                                                                                                                      • -

2003年、年末企画


主催:最速 協賛:危なげ安全ピン 育児、イラスト:USED SORRY



女の湯けむりストリッパー



「はぁーぁ、この一杯がホントたまらないのよねぇ」


ステージを終えた後の楽屋での一杯はアタシにとって、明日への活力となる、ささやかな楽しみ。
今日だって、そんなささやかな幸せを感じながら1日を終えるはずだった……。

アタシの名前はマチ子。
寂れた温泉街でストリッパーをやってるの。
ちょっと老けて見られるけど、まだ21よ。
なんで、こんな小さな街でストリッパーなんてやってるのかは秘密だけど、今の生活に特に不満はないわ。
まぁ、たしかに、田舎の小さな街だから、たいした娯楽もなくて仕事の後の発泡酒だけが楽しみっていう色気のない生活ではあるけどね。

でも、今夜、そんな小さな幸せの時間さえも奪うような事件が起きたの。
その始まりは、お世話になってる温泉旅館の主人からの一本の電話だったわ。
ちなみに、ここの主人はハゲなので、「ハゲ」っていうニックネームなのよ。

「マチ子、大変なことになった」
「何よぅ〜」
「今すぐ、きてくれないか」
「何を言ってるの? もうとっくに着てるわよ」
「そうじゃなくて、すぐに来てくれってことだよ」
「あー、もう、しょうがないわね!」

そんなやり取りの後、ハゲがかわいそう(ハゲだから)なので、アタシは、ツルッパゲの待つ温泉旅館「アニマル動物園」へと向かったの。
そして、アタシが旅館に着くと、ハゲは慌てた様子だったわ。

「マチ子、大変なことになっちゃったよ」
「そんなに慌ててどうしたのよハゲ」
「まぁまぁマチ子ちゃん、まずはこっちへ」

そう言うとハゲは、アタシをハゲの部屋、つまり社長室に連れて行ったの

「もうなによハゲ、こんな所にまで連れ出して。だからツルツルなのよ」
「そうじゃないんだよ…実は…」

と、ハゲはそれぞれの客室に設置されているモニターの画面をアタシに見せた。
そしてアタシの目は072号室のモニターに釘付けになった。

「ハゲ、ねえハゲ!なにコレ!?」
「なあオレ、こんなときどうしらいいかわからないよ助けてくれよ」

そこには、涙を流しながらポトーン、ポトーンと卵を産みつけているウミガメの姿が映っていた

「なに…コレ?」
「わかんないよ、なあマチ子、オレどうしたらいいんだよ」

アタシにもわかんないわよ…

「あともうひとつ話があるんだ、こっちも大変なんだよ」
「なに?またウミガメだったらアタシもう脱がないからね」
「そうじゃないんだ、コレを見てくれよ」
「………!?」

そこに映っていたのは…


フセイン元大統領の影武者だった。
アタシみたいな素人に分かるほど影武者だった。
しかも、新約聖書を読んでいる。
本を上下逆さまにして。

そして、彼には深々と、丸太が刺さっていた。

それは37564号室からの映像だった。

なぜ、丸太がと言うより先にこの不思議な男の目的はとマチ子は思った。
影武者をするならとことんやれと。
聖書を逆さまに読むなよ暇人と問いつめたかった。
その部屋には丁度丸太が加速度を付ければぶち破れる窓がついていた。
もう既にぶち破られていた後だったので、あぁ丸太が窓から加速度をつけて飛んできたんだなとはっきり分かった。
はっきり分かったのか分からない事件の幕開けだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
CM入りまーす。

〜 危なげ最速劇場 〜

「女の湯けむりストリッパー」

この番組は
味ひとすじ 永谷園
ヰセキ農機
フランスベッド
の提供でお送りします。

では、続きをお楽しみくださいませ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


丸太が突き刺さっている男を見て、マチ子は気が動転した。
ハゲはそこで生唾をごくりと飲み込むと、そっとマチ子の肩に手を回し、耳元でささやくように言った。

「マチ子ちゃん、あの丸太の先をよーく見てごらん」

ハゲはカメラを丸太の先にズームアップした。
するとそこには何やら日本語で書かれたメモが付いていた。

「こ、これは・・・い、いやーん」
「イヒヒヒヒ、イヒヒヒヒ」

ハゲは頭から湯気を上げながらすけべっぽく笑った。

そこに書かれていた文字とは・・


『事故死』だった・・・。


「は?・・・なにコレ?こんなもので事故に見せかけようとしてるのかしら?」
「え?事故じゃないのコレ?」
「バカじゃないのアンタ。どう見たって事件でしょ!じ・け・ん!」
「そうかなぁ?逆に事故っぽく見えないか?」
「『逆に』ってなによ。世の中『逆に』で済むんだったらアンタだって『逆に』ハゲじゃないわよ」
「む。マチ子、その『逆に』の使い方は間違ってるぞ。オレはハゲだ」
「・・・あー腹立つ。とにかく現場に行くわよ!・・・ってそういえば、なんで客室にカメラ備え付けてるのよ?」
「そ、そ、それはだなぁ・・・ア、アレだよホラ。緊急時のアレ用にだなぁ・・・」

ハゲは慌てながら37564号室の鍵を探し始めた。


ハゲ(ゴソゴソ・・・ゴソゴソ・・・)

「見つかった?」
「な・・・ない!」
「髪が?」
「なーーーい!・・・ってなんでやねん!鍵だよ鍵!」
「・・・ハゲ、あんたが踏んでいるそれ、何?」
「こ・・・これは!37・・・ん64号室の鍵・・・」
「37何?」
「37464号室・・・おしい!」
「まぎらわしい鍵つくるんじゃないわよ!・・・ん?37464号室ってことは、37564室の真下!?だったら、天井突き破れば37564号室に入れるじゃないの!」
「そ、そうか!よし、行くぞ!」

・・・2人がこんな風に夢中にっている間、実は37564号室では新たな事件が・・・


ドカーン!

「よし!天井に風穴をぶち開けることに成功したぞ。こんなこともあろうかと各部屋に大砲を設置しといて良かった!」
「備えあれば憂いなしってやつね。さすがだわ。じゃあ37464号室のベッドをジャンプ台にして上に飛び移るわよ。」
メラニン色素?」
「何言ってんのよ!みち子ちゃんかあんたは!って言われたいだけでしょ!とっとと行くわよ!」

そしてようやく37564号室にたどり着いた2人。

目の前にはフセイン元大統領の影武者の死体がある。
そしてなぜか横ではトナカイが、証拠品である丸太をバリバリ食べ始めるという事件が起きていた。

「ん?ねぇハゲこれ見てよ。さっきはモニターが白黒で分からなかったけど、この影武者、赤と白の服を着てる・・・」
「赤と白の服に、フセインには似ても似つかない真っ白なおヒゲ。傍らにトナカイ・・・と言う事は、今ここで死んでいるのは・・・」

ハゲ&マチ子「サンタクロース!!?」

その時だった。
旅館にお客さんが来た時になる仕掛けの、ハゲの「腕ハト時計」が「ポッポーッ」っと来客を告げた。

「ああ、誰か来たから行かないと。マチ子ちゃんここよろしく!」
「ええ!?誰よこんな時間に。すぐ戻って来てよね〜!ああトナカイ!食べちゃだめ!すぐ戻って来てよね〜〜!ああトナカイ!」




その時マチ子は気づいた。

「うわ、このトナカイ、背中にチャックついてる。」

マチ子はすぐにチャックを下ろした。
そして、中身は、お約束どおりまたトナカイだった。

12回ほどチャックを下ろすとようやく人が出てきた。

「あなたが犯人ね!」
「ち、ちくしょう。覚えてろ!」

しゅっ。
バタン。

逃げ出そうとしたその瞬間、例の窓から飛んできた包丁が中身に刺さった。

「うそ、中身、中身ぃぃぃ。」

マチ子は中身を助けようと包丁を抜いた。
・・・そこにハゲが帰ってきた。

「ただい・・・、マチ子ちゃん!?き、君がやったの?」
「ち、違う、わたしじゃ、・・・」

しかし、マチ子は包丁を持ってるばかりでなく、いつの間にか、背中に「私が犯人です。」との張り紙があったのだ。


「誰かがアタシを陥れようとしている」

マチ子はそう直感した。
トナカイの中の男も口止めで殺されたと見て間違いないだろう。
マチ子は思いのほか冷静だった。
しかし、丸太に「事故死」と書いてみたり
「私が犯人です」という張り紙を張ってみたり、手法が幼稚すぎる。
金玉を金色に塗るくらい幼稚だ。
「金色」は「きんいろ」ではなく、「こんじき」と読む。

何はともあれ、まずはハゲの誤解を解かなくてはならない。
そこで、マチ子は、今ここで起こったこと、そして、それに対する自分の推理をハゲに聞かせてみた。

しかし、このハゲ、気が動転してるせいか、頭が悪いのかなかなかマチ子の説明を理解してくれない。

「どうして、わからないの! ちょっと考えれば、わかるでしょ!その頭は何のために付いてるのよ!人間の頭は、ハゲるためだけに付いてるわけじゃないのよ!」

そんなときだった。
マチ子の荒げた声を聞きつけたのか、部屋に小柄な男が入って来た。

「あのぉ、隣りの部屋の森田という者ですが……」

この森田と名乗る男、なぜか、洋服の上からマワシを締めている。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
CM2!

はぁ〜〜〜〜〜るばる 来たぜ
鮭茶漬けぇ〜〜〜!

あ〜〜〜〜〜〜なたと 食べたい
鮭茶漬けぇ〜〜〜!

年末年始も!

永谷園の鮭茶漬け

CM3!

燃焼系♪燃焼系♪未ー開式♪
燃焼系♪燃焼系♪未ー開式♪

こーんな運動しーなくても!(無理!)

○凹≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡3|バカの壁

燃焼系♪ホッホッホ♪未ー開式♪
○ントリー!

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「あのぉ、僕と一番取り組みをしてくれませんか?」

…なにコイツ?なんでこんなヤツと相撲なんかしなきゃいけないのよ。
こっちはそれどころじゃないんだから。

「よおしっ、かかってこい」
「ハゲ!バカ!ハゲ!なにやる気になってるのよ!」

のこったのこったのこったのこった

「いやぁ負けちゃったよマチ子ちゃん。森田さん、お強い」
「そんな、ハゲさんこそツルツルツルツルしてらっしゃる」
「はっはっはっ」
「はっはっはっ、では僕はこの辺で」

一体この森田という男、何者なんだろう?と思っていたところで

ジリリリリリリリリリ

「いっけない!開幕5分前のベルだわ!」

そう、私の本来の仕事、ストリップが始まるの。
これはこんなところでハゲとツルツルツルツルしてる場合じゃないわ。

「ハゲ!アタシひとっ走り脱いでくるから、現場はこのままにしておいてね!」
「合点承知!」

そしてアタシは、ストリップ劇場へと向かったの…。


その頃、マチ子の2番目の恋人である二階堂家の次男である次郎は2杯目のご飯をむしゃむしゃとほおばっていた。

「なんか、マチ子に会いたいなぁ。あ、そういえば、今仕事中か。じゃあ、見に行こう」

二階堂家からマチ子の働くストリップ劇場までは歩いて2時間の距離にある。
開幕まであと5分。
間に合うのか、次郎!急げ次郎!


inストリップ劇場

「あーん・・・ァハーン・・・」
観客「オーッ!」

一方、37564号室では

森田弟「す、すみません!今この辺で兄さん見かけませんでしたか!?」
ハゲ「あんた誰」
森田弟「森田の弟です。うちの兄は、和服の上にヘビを締めているはずなんですが・・・」
ハゲ「洋服の上からマワシを締めている森田さんならさっき・・・」
森田弟「それだーーー!!!ありがとうございます!」

森田弟は去っていった。森田兄は隣の部屋にいるのに。


その頃、客席に一人の女が立っていた。
サングラスをはじめ、黒づくしだ。

「役者が、そろってきたわ。」

そんな彼女に、靴下の柄が左右で違うことを教えてあげられる人はいなかった。


「みんなありがとー!マチ子みんなのことが大好きよー!」

ふぅ…脱いだわ、そして踊ったわ。
いつもならここで発泡酒を飲んで一息つくところなんだけど、今日ばっかりはそんなことしている場合じゃないわね。
とにかく37564号室に戻らなきゃ…

「お待ちなさい」
「はい?」

部屋に戻ろうとしたアタシを、黒ずくめの女が呼び止めた。

「ちょっとアナタに、お話があるの。時間は取らせないわ」
「そんなことよりアナタ、靴下の柄が左右で違ってるわよ?」
「え……いやーーーーーー!」

黒ずくめの女はそのまま走り去ってしまった。
そりゃいくらアタシでも、右足が花柄で左足がヒョウ柄だったらおかしいと思うわよ。
そして37564室に戻ってきたアタシの目に飛び込んできたのは、襦袢姿でいままさに腹を切ろうとしているハゲの姿だった。

「マチ子ちゃん、すまん!」
「ってなにやってんのよハゲ!待ちなさいよ!」
「でも、でも、オレもうマチ子ちゃんに顔向けできないよ」
「一体何があったっていうの?話してよ」
「実は……」

そこでハゲは、驚愕の事実をアタシに話し始めたの。


「部屋を見て・・・。」
「え?」

そこには、あるはずの2つの死体が無かった。

「な!?」
「部屋の前でずっと見張ってたんだけど、さっきドアを開けたら。。。死体が消えてたんだ」
「まさか。・・・下の部屋から入ったんじゃない?」
「いや、そんなはずはないよ。うち、オートロックだし。鍵はほら。」

そういってハゲは鍵を見せた。

「マスターキーも客用も僕が持ってる。」
「そんな。。。」

と、その時、わたしの頭の上で電球が光った。(怪現象)

「わかったわよ!ハゲ!謎は一部解けた!!!」
「え?」
「トナカイの中身の生死を確認した人はいないわよね?」
「う、うん。・・・ま、まさか!」
「そう、トナカイの中身は死んでなかったのよ。そして、サンタクローズの死体と一緒に下の部屋から出たのよ。」
「すごいや、マチ子ちゃん。かなり強引だけどそれっぽいよ!」


ちょうどそのときだった。

ドンドンドン

誰かが部屋のドアをたたいている。
開けてみると、真っ赤なシャツに白いネクタイをしめた松田と名乗る男が立っていた。
こういう者ですが・・・差し出した名刺を見ると、どうも私立探偵で森田とは反対の部屋の住人らしい。

「ねえ、タバコの火貸してよ」

松田はタバコの火をもらうと、そそくさと出ていった。

ハゲ「なんだったんだ、今の男は」
マチ子「いやーん、ちょっといい男じゃない。マチ子、まいっちんぐ
「なんか話がそれるなー。・・で、そうそう、中身の男はフセインの影武者を担いで下の階から逃げていったんだ、間違いない!。ジャッキーチェンに酒を飲ませるなー、余計に強くなってしまうぞー!気をつけろー!!」
「あんたそれ言いたかっただけじゃない。だから、話を戻してよ。・・えっと、そうそう、中身の男はフセインの影武者を担いで下の階から逃げていったのよ!」


「とりあえず下の部屋に行ってみましょ。何か手かがリがあるかもしれないわ」

マチ子とハゲは、トナカイ男の足取りを追うべくとりあえず、37464室を捜索することにした。

「ちょっと待ちなよ、ベイビーたち。」

穴から下の階に降りようとした、そのときだった。
背後から赤シャツの私立探偵、松田の声が鳴り響いた。

「オレも連れて行きなよ。殺人事件の捜査に探偵がいても損はしないだろ?ていうか、キミ、かわいいよね。オレ、恋しちゃったかもしれない」

そんな松田の言葉に頬を赤らめ、モジモジしだすハゲ。
何かを勘違いしてるようだ。

「て、違うわよ! アンタのことじゃないわよ! どう考えたって、誘われてるのはアタシでしょ!」
「いや、オレが誘ってるのはハゲさんだ。よかったら、今晩、セックスしよう」
「なぬーっ!」

そして、お互いの手をそっと握り合うハゲと松田。
さらに驚いたことに、松田との出会いによりハゲの女性ホルモンが活性化したのかハゲの頭の毛がフサフサになっていった。
調子づいてきたハゲが大声で叫んだ。

「よーし、37464室へレッツゴー!ゴー! ゴー! ゴー! イェーイ!」

調子づくハゲ。 なんか、ムカつくハゲ。
いや、もうハゲじゃない。でも、ハゲだ。
マチ子は拳を固く握り締め、じっと耐えた。
とにかく、早くトナカイ男を追いかけてなくては。
しかし、37456室でマチ子たちが目にしたのは、誰にも想像できないような驚くべき光景だった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
CM4!

田植え界に今、革命が起こる!!

刈取、搬送、脱穀、排出まで高精度に行う
「ツインシステム」を採用!!

新型トランスミッション「I-T.A.C.H.」(アイタッチ)で
業界初、らくらくスピンターン!!

ヰセキコンバイン Japanシリーズ!


刈るか、刈られるか…
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


ハゲ「・・・あれ?」
マチ子「何もないじゃない!」

唖然としているアタシ達に、松田が言った

「そりゃそうさ。ここは37456号室だ」
「え?」
「事件現場の下の部屋は37464室号だからな」

松田はタバコの煙を吐き出しながら言った。

「あーややこしいわ!やいハゲ!この際元ハゲ!なんで部屋数少ないのに、ルームナンバーだけこんなに桁違いなのよ!」
「だって多い方が大きいホテルっぽいだろ・・・」
「っぽく聞こえたって、客室は8部屋しかないじゃない!無駄な営業努力してんじゃないわよっ!」

アタシはさっき生えて来たばかりの元ハゲの髪を、抜かんばかりの勢いでつかみながらまくしたてた。

「あーちょっとちょっと」

松田がこちらのやり取りに構わず、のんびりした口調で言った。

「なによ?」
「オレたちはトナカイの中味を追っているのか?」
「そうよ。それがどうしたの?」
「ってことはサンタクロースの姿をしたフセインの影武者の方は確実に死んでたのか?」
マチ子&ハゲ「・・・あ」

そういえば、あの時は丸太を食べるトナカイの方に好奇心をそそられて、サンタクロースの姿をしたフセインの影武者の生死をちゃんと確認していなかった。
だってトナカイを生で見る機会あんまりないもんね。まあ死体もそうだけど。

マチ子「死んだと思ったトナカイの中味が生きていた・・・ってことは、サンタクロースの姿をしたフセインの影武者、通称サンタの影武者が生きていたってこともあり得るわね」
ハゲ「しかし丸太が刺さってたしなぁ」
マチ子「だからこそトリックなのよ」
ハゲ「じゃあ死んだのはトナカイの中味のほうで、その死体を通称サンタの影武者が担いで行ったってことか?」
マチ子「もう確かめようがないわね・・・どちらが本当に死んでいたかなんて」
松田「ま、どっちも死んでいなかったって可能性もあるしな」

アタシたちはしばらく無言で立ち尽くした。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

CM5!

うまいドッグフードがでた!
犬「むしゃ!むしゃ!」
トップブリーダーが推奨します!
トップブリーダー「ワタシも食べてます!」

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「はぁ、はぁ、はぁ、マチ子ちゃ〜〜ん!」

マチ子「次郎!私の2番目の恋人である次郎じゃないの!どうしたの突然!?」
次郎「何か突然会いたくなっちゃったんだ。こんなことってあるよね。マチ子ちゃん、結婚しよう!」
マチ子「ちょ、ちょっと待ってよ。今それどころじゃないの!結婚もしないし!大変なのよ。サンタの影武者とトナカイの中身が死んだと思ったらいなくなっちゃったの。」
次郎「ええ!?ものすごい説明省かれてる気がするけどムリヤリ理解したよ!いま僕が来る時、すぐそこでそれっぽい2人とすれ違ったけど違うのかなぁ。」
松田「それは本当かい坊や。よし、追いけるぞ。おいハゲちゃん、おれの背中に乗れ。おんぶだ。」
ハゲ「いえーい!おんぶイエーイ!」
松田「坊やも早くマチ子ちゃんをおんぶするんだ。どっちが早く奴らに追い付くか競走だ。」
マチ子「なんでそうなるのか分からないけど、こうなったからには次郎、負けちゃダメよ!もし勝ったら結婚してあげるから!」
次郎「ほんと!?よし、僕がんばる!」

松田「よーい・・・ドンじゃこりゃー!」


走る。
走る。
ただひたすら走る2人。

マチ子「何よ!?松田ってやつ結構速いじゃないの!?あんなハゲ背負ってるのに何で速いのよ!」
松田「ふふふふふ、どうしたね。もう終わりかな?」

全く息を切らせる様子も無く余裕を見せる松田。

マチ子「くぅ!もっと頑張って走りなさいよ!あんた私と本気で結婚したいと思ってるの?!」
次郎「ハァハァはぁはぁ、そ、そんなこと、言われ、ハァハァ」

こちらはもう息も絶え絶えである。それでもまだ、100Mを11秒台で駆け抜けるペースを保って走っている。

マチ子「何ハァハァ言ってるのよ!気持ち悪いわね!それに私に言い訳する気?最低!この根性なし!バカ!アホ!死ね!髪の毛全部抜けきって死ね!!」

と言ってしきりに次郎のまつ毛を抜き始めるマチ子。

次郎「うぅ・・・、2時間かけて走ってきたところなんだもん・・・、それなのにそんな言い方・・・」
マチ子「ハゲて死ね!・・・・て、ハゲ?・・・・・・は?!待って!?」

と、何かの変化に気付き松田に呼びかける。
このときもまだ次郎のまつ毛を抜く手は止まっていない。

松田「何だい?まさかこの後に及んで勝負は無しにしようだなんてことじゃないよな?」
マチ子「そんなことしないわよ!そんなことじゃなくて、松田!あんた、それ背負ってるの、ハゲじゃないわよ!マグロよ!それあんた!冷凍マグロよ?!」

松田が背負っていたのは1mもあろうかというマグロであった。
否、冷凍マグロであった。

松田「なっ・・・?!!何じゃこりゃー!!?何時の間に回遊魚に?!じゃ、じゃあオレのハゲちゃんは一体どこに・・・!?どこじゃこらー!!」

と、振り返っても遅かった。何も無かった。あるのは生い茂った森林のみだった。
そう、走りに走った結果、マチ子たちは樹海に迷い込んでしまっていたのである。





マチ子「なんで樹海なんかに迷ってんのよ!?」
松田「さぁ?人生はいつも樹海の中さ」

 松田はそういうとタバコを一本吸いだした。

マチ子「答えになってないわよ!」
次郎「ふぇ〜んマチ子ちゃーん」

次郎はすでに泣いているけど無視ね。

??「キャーー!!」

あたしたちが途方に暮れようとした時、遠くからハゲの悲鳴が聞こえた。

次郎「うぇ?」
マチ子「何!?なんなの!?」
松田「ハ、ハゲちゃん!ハッ…まさか、奴らの毒牙にハゲちゃんの貞操が!?」
マチ子「なんでよ!」

アタシが次郎のまつ毛を抜きながら答えてると、松田は悲鳴のした方向へ向かって冷凍マグロを背負ったまま走り出した。

マチ子「次郎!何してんの、追いかけるわよ!」
次郎「わ、わかったよぅ、マチ子ちゃん」

アタシ達が悲鳴の場所に辿り着いたとき、そこには驚くべき光景があった。
……そこには、温泉の中で猿に取り囲まれているハゲの姿があった。


「バカ?」第一声がこれとは、なんとも情けない私。
「はげちゃーん、ボクもさんせんー☆」と3秒で素っ裸になった松田もバカ。
「ぼくもはいるーっ」と更に2秒で脱いだ次郎もバカ
バカばっか
頭痛くなったマチ子はそこでへたり込み眠ってしまった。
冷凍マグロが隣で、深い不快眠りについた。

マチ子はそこで夢を、見た・・・・。


カコーン、カコーン

山中に、パパが木を切っている音が鳴り響いている。
パパは木を切るのが生き甲斐で、将来大きくなったら木を切ってはモロヘイヤ、木を切ってはモロヘイヤが口癖なの。
「モロヘイヤってなに?」ってパパに聞いてみたものの、それは後の祭りだったわ。
アタシがそんなことを疑問に思わなければ、あんなことには…。
あ、そんなことより、もうお昼の時間だわ。パパを呼ばなきゃ。

マチ子「パパーお昼だよー。戻ってきてー」
マチ父「わかったわかった。今日も丸太が大漁だぞ」
マチ子「うわー、パパすごーい!こんなに沢山の丸太が…丸太が…マグロが…マグロ!?」
マチ父「はっはっは。はっはっは。」
マチ子「なんでマグロなのー!」
マチ父「はっはっは。生温かい。はっはっは。はっはっは」

…なんで丸太がマグロなのよ!…あれ…ここは…温泉?アタシ眠ってたんだ…。

ハゲ「マチ子ちゃんどうしたの?汗びっしょりだよ、なんか悪い夢でも見たの?」
マチ子「うん、実はパパが切ってた丸太がマグロっていう夢を…あれ?丸太がマグロ?マグロ…あーーー!!」
ハゲ「な、なんなんだよマチ子ちゃん?」
マチ子「だから!マグロなのよ丸太は!松田も次郎も、ちょっとこっち来てアタシの話を聞いて!」

そこで思いついたことを、アタシは興奮気味にみんなに話し始めた。


「つまり、サンタクロースに刺さってた丸太は 丸太のように見えて、実はマグロだったのよ。そう考えれば トナカイ男がムシャムシャ食べてたことの説明もつくわ」

マチ子は「浪花節だよ人生は」のメロディに乗せて自らの考えを歌い上げた。
すると、今度は松田が「TENKAを取ろう!-内田の野望-」のメロディに乗せて語りだした。

「しかし、それがマグロの刺身には しょう油とワサビが必要不可欠だろう」

マチ子は松田を無視し、話しつづけた。
今度は、「ロード 第8章」のメロディに乗せて。

「とにかく、このマグロがあの丸太だとするとハゲとマグロをすりかえたのは犯人の仕業よ。となれば、ハゲの身が危険だわ」

そこへ、次郎が口を挟んできた。
「テレポーテーション 〜恋の未確認〜」のメロディに乗せて。

「オレ、次郎だけど、二郎に改名するよ。だって、坂上二郎さんが好きだから」

次郎、いや、二郎は泣いていた。
あっけにとられるマチ子と松田。
しかし、そんな中、事態は急展開を見せる。
ずっと遠くのほうから、こっちに向かって全速力で走ってくる一人の男に、マチ子が気付いたのだ。
神田正輝だ。

と言っても、神田正輝はそのまま止まることなく全速力で走り去っていったのだが
すれ違いざまに、この事件の謎を解くための重要な手がかりとなる、あるキーワードをささやいたのだ。
そのキーワードとは……


「衣装」

マチ子はそのキーワードを聞いた。
一瞬「遺書」か迷ったけれど、自分の職業柄、「衣装」だと結論付けた。

マチ子「衣装・・・?一体何のことかしら?もしかしたら、死んだかどうか分からないあやふやな2人はサンタクロースとトナカイの衣装をしていたのかも・・・?だとしたら、何のために?仮想大賞(誤字)にでも出るつもりだったのかしら?いや、もしかしたら温泉旅館のイベントにでも呼ばれたのかも知れない。だとしたら、ハゲは二人を知っているはずだわ。やっぱり違うのかしら。それとも・・・、ハゲが嘘をついているとか。・・・ま、まさか!」


「ちょっとハゲ!そこに座りなさい!」

マチ子は声を荒げた。
しかし、マチ子以外はみんな温泉にどっぷり腰を下ろしていたので、仕方なくマチ子も温泉に入って話を続けた。

「私が旅館に駆けつけた時、すでに事件は起きていたわ。つまりあんたが第一発見者ってことよね。そのあとも私がストリップに出ている間にサンタとトナカイが部屋から消えたり、あんたを置いて樹海に迷い込んでる間に猿と温泉に入ってたり、事件は会議室で・・・じゃなかった、事件はすべてあんたの周りで起きてるのよ!そう言えば「私が犯人です」って書いた紙も、一緒にモニター画面を見ながら私の肩に手を回した時に貼ったんでしょ!一体これはどういうことなの!?説明してちょうだい!」

ハゲ「ふっふっふ・・・はっはっは・・・あーっはっはっはっ!あはーっあはーっ!ブッ」
マチ子「ちょっとお湯の中でおならしないでよ!何がおかしいのよ!」
ハゲ「マチ子ちゃん、後ろを見てごらんよ。」

・・・マチ子がスローモーションで3回振り返りながら見た、衝撃の光景とは!


マチ子「ぷ、プリプリ大魔王!?」

そう、アタシが振り返った先にはプリプリ大魔王が居たのだ。
表情といい振る舞いといい、実にプリプリとしている。

大魔王「プリプリプリ。プリプリプリ」
マチ子「…で、だからなんなのよハゲ?」
ハゲ 「大爆笑だろう?プリプリ大魔王って。大魔王さんありがとう、もう帰っていいですよ」
大魔王「プリー」

プリプリ大魔王は、ステキな笑顔でこの場を去っていった。
なんなのよ、大魔王といいハゲといい、もうワケがわからなくなってきたわよ…。

ハゲ「で、冗談はさておいて」
マチ子「冗談ですませられるの?いまの現象。とにかく納得のいく説明をしてちょうだい」
ハゲ「わかったよマチ子ちゃん…ここまでバレちゃあしょうがねえな、おい野郎共!出てこい!」
マチ子「野郎共って、ここには二郎と松田しかいない…」
松田「覚悟して貰おうか、マチ子」
二郎「マチ子ちゃんごめんね…」
マチ子「ホントにお前らなんだ…わかった、もういい。アタシもう本気出すから」
ハゲ「野郎共!やっちまえ!」
マチ子「もう、ホントにバカばっかり…」

そしてアタシは、本気を出した。


そりゃもう本気を出したわ。

マチ子「オラァ!バカども、かかってこいやぁ!」
二郎「ひぃ!ごめんなさい」
松田「か、堪忍!堪忍してけろ!」
ハゲ「そんなに怒るなんて・・・」

謝るのかよ。でも謝ったってもう遅いわよ。
アタシが本気を出したらもう誰も止めらんないんだから。

マチ子「ほら!ほら!どうしたの?!そんな程度なの?!」
二郎「痛い!やめて!マチ子ちゃんやめて!干し柿を投げるのはやめて!華麗に投げるのはやめて!」

アタシの本気のスライダーは誰にもかわせないわ!

松田「うおっ!や、やめるんだ!マチ子!やめっ、ダンゴ虫をボンドでくっつけるのはやめるんだ!華麗にくっつけるのはやめるんだ!」

アタシの本気のアロンアルファ(ゼリー状)は誰にもはがせないわ!

ハゲ「ぐふ!ぐふ!ぐふ!み・・みぞおちはやめ・・・。華麗な、ぐふ!パンチぐふ!」

アタシの本気のボディブローは誰も受け切れやしないわ!

でもたとえ、どんなに本気を出しても忘れてはいけないのは華麗さよ。
そう。なぜならアタシはストリッパーだから。
アタシはインドネシア伝説のストリッパーだから。
それからネパールとか四国とかとにかくもう伝説。

しかもこうやって真っ裸で本気を出してるというのに、アタシの体の一番オイシイ部分は紙一重で見えないのよ。
これがストリッパーの真髄よ。見えそうで見えない。しかも痛い。
それなのにこいつらときたら何?この恍惚とした表情ったらないわね!アハハハハ!





そしてアタシの本気は3日3晩続いたわ。
もう誰がハゲだか二郎だか松田だかわかんないぐらいに。
てか、あれ?よく見ると、もしかして全員、ハゲ?・・・あれ?
・・・・でも、その真相はもう、この様子じゃ確かめられないわね。

「ふん!こんな程度だったとは笑わせるわね!ちゃんちゃらオカシイわ!もう行くわよ!プリプリ大魔王!」
「はい」

そしてアタシは、また、プリプリ大魔王(本名・一茂)と共に、人類を救うため、裸一貫で世界を回るのだった。



女の湯けむりストリッパー。終。

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 こういうの見つけると、ログ取っておいて良かったって心底思う。