後輩−オレ

「たむらさんムチドルって知ってます?」
「なにそれ?」
「むちむちのアイドルってことですよ」
「たとえば誰よ?」
「えーと,細川ふみえとか」
「微妙に古いな…お前,ふみえ細川が好きなの?」
「いや自分は違いますよ」
「あ,そうか,ロリだったもんなお前」
「ロリってワケじゃないですけど…ギュッてできる子がいいです」
「カブトムシ?」
「なんなんですかそれ」
「ギュッてできるくらいだと,そのくらいのサイズかなぁって」
テントウムシくらいがいいです」
「またえらいちっさいな」
テントウムシって女の子の生まれ変わりなんですよ」
「なんだそれ」
「あの,火の鳥の」
「あ,オレ,火の鳥のことなら何でも知ってるよ」
「その火の鳥鳳凰編ですよ」
「あーあの鬼瓦のヤツ?」
「いやそれはわかんないですけど,それで輪廻転生の話があるじゃないですか」
「あーはいはい」
「それで,テントウムシの次は女の子に生まれ変わるんですよ」
「ふーん」
「ていうかたむらさん,火の鳥ホントに知ってます?」
「当たり前だよ,ていうかオレが火の鳥だよ」
「意味わからないですよ.火の鳥がなんでこんなところにいるんですか」
「いや,あんまり目立っちゃいけないかなぁと思って」
「目立つでしょう,燃えてるんだから」
「いや,実際問題そうでもないよ.控えめな子だから」
「控えめって,たむらさん身長いくつでしたっけ?」
火の鳥はね,183センチ.この前身体検査ではかったばっかりだからかなり正確だよ」
「183センチが燃えてたらかなり目立つじゃないですか」
火の鳥恥ずかしがり屋だから,あんまりオモテに出よう出ようとしないのです」
「ていうかなんで一人称が火の鳥になってるんですか」
「だって火の鳥だもの,オレ」
「たむらさん」
「はい」
火の鳥さん」
「はい」
「どっちですか?」
火の鳥
火の鳥って,すごい昔から生きてますよね.たむらさんっていったい何歳なんですか?」
「たくさん」
「たくさんってアバウトすぎますよ」
火の鳥は数字なんて概念にとらわれないから.なぜなら不老不死だからね」
「うまいこといいますね.でもこの前,オレは永遠の十代だって言ってませんでしたっけ?」
「気持ちはね」
「それだけ長生きしてるのに,なんで歴史の教科書とかに出てこないんですか?」
「ああ,火の鳥会った人間全員殺してるから」
「危険ですねなんでですか?」
「人間はみんな,火の鳥の血を飲もうとするんだ.それで不老不死になれると思ってるから」
「じゃあ狙われまくりですね」
「そう.でも火の鳥痛いのキライだから,逆に倒す.会った人間ことごとく倒す」
「じゃあオレもですか?」
「倒す」
「でもいま雨降ってますから,外出たらオレの勝ちですよ」
火の鳥がんばって燃えるから負けない」
「ていうかいい加減この話やめません?」
「うん,そろそろいいかなーと思った」
「じゃあ話題変えましょう.たむらさんサッカー好きですか?」
火の鳥あんまり観ないねえサッカー」
「…」

 こんなアホな会話できるのたむらさんだけですよーって言われた.こんな会話してるから終電帰りになるんだよな.